2011-09-10

山ふところ(うどん) 福知山のランチタイム32

 初めての体験。
 古民家の上質な空間でうどんを食べる。 びっくりドンキーにもびっくりしますが、こちらにもびっくり。びっくりウドンキーです


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 福知山市大江町在田(ありた)に、『山ふところ』という名前のうどん屋さんがある。そう聞きました。


DSC00399 古民家の蔵を改造した『囲座夢(いざむ)』という喫茶店が6年前からあります。その母屋を利用して、1年半前から『山ふところ』が始まりました。『囲座夢』をやっているのはお母さん。『山ふところ』をやっているのは息子さん。息子さんは讃岐でうどんを勉強してきました。
 正しくは『福路 山ふところ』。福路は鳥のフクロウにつながります。



 ネット検索で店のホームページを見つけました。店のポリシーが伝わってきます。

○ ランチタイムは1日20食限定。11:30~14:00.うどんがなくなった時点でその日はおしまい。うどんがあっても14:00がきたらおしまい。
 
単なるうどん屋ではない。古民家の座敷に上がってうどんを食べる。
○ 手打ちの小麦粉からダシの材料に至るまで、こだわりぬいている。








 由良川に沿う国道175号線、北近畿タンゴ鉄道(KTR)の公庄(ぐじょう)駅を目印にして、国道429号線に進路を変えます。粗末な橋で由良川を渡り、さらに進みます。国道175号線を離れてから1.1kmです(地図をクリックして拡大)。
 電話番号は0773ー56-0136です。第一月曜、第三月曜定休。



大きな地図で見る
 同じような古民家があちこちに見える農村です。『山ふところ』の案内板が道沿いに立っています。その案内板から稲穂の田んぼ越し、少し小高い場所に『山ふところ』が見えます。



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 玄関に入ります。「ほお」とか「へえ」とか「わあ」とか、この時点で、みなさん、すでにびっくりウドンキー。


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 どうぞこちらへ。
 座敷が視界に入った途端、またびっくりウドンキー。私はうどんも忘れて写真に夢中。
 椅子席が多いのは、膝の痛いお年寄りにはありがたいことですね。


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 1日20食限定。けれども、この日は平日で客が少なく、1時半の時点でもまだ3人でOKでした。ところが、土・日・休日ともなりますと、噂を聞いた客が遠方からも訪れます。なかには20食にあぶれてしまう客もいますが、「そこをなんとか」とはいかないそうです。店は厳格に1日20食を守り抜いています。そんなもん、2、3本ずつ抜いていったら1人前くらいなんとかなるやんけと私は思いますが、『山ふところ』のポリシーとして、そうはいきません
 
 どんなうどんがあるのか。よく見ていただけるように、ホームページのメニューにリンクさせておきました。右上の画像をクリックしてみてください。



 我々は、こんなうどんを注文しました。

DSC00351  この夏の新メニュー、トマトの冷やし中華膳(5色限定)、1300円です。中華麺も自家製手打ちです。稲庭うどんくらいの太さになっています。麺の歯ごたえ、和風アレンジのスープともにおいしいです。おいしさのびっくりウドンキー度、9~10です。

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 おろし醤油かけおうどん。1200円。讃岐うどんでいうところのぶっかけ、もしくは生醤油です。生醤油寄りです。美肌うどんです。ほれぼれします。シコシコでは言い足りない歯ごたえ。心地よい。おいしさのびっくりウドンキー度7~8です。DSC00360

 ざるおうどん膳。1200円。髪結いさんに行ってきたばかりの丸髷(まるまげ)みたい。しゃきんとした面持ちのざるうどん。おいしさのびっくりウドンキー度、やはり7~8でしょうか。


 それぞれは昼のお膳になっています。うどんの他に、こういう副菜もついています。炊き込みご飯、茄子といんげんの煮浸し、鯵の南蛮漬け、お漬物。

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 うどんはコシが命といいますが、うどんのコシより自分の命みたいなお年寄りには、おそらくコシがありすぎると思います。お年寄りというのは、噛めない食べ物にえらく文句言いますからね。喉に詰まったら死ぬということで、動物学的にみればきわめて正常な防衛本能かもしれません。

 脂の味を生かした炊き込みご飯も、残念ながらお年寄りからは敬遠されそうです。

DSC00315 ところが、です。

 アラセブというのか、70歳前後のお年寄りって、たとえ歯はなくてもお金があります。車を運転する人もまだまだいます。お年寄りのネットワークはお寺・趣味・スポーツを介して充実していますから、おいしい店の情報はツィッターなしでも広がります。田舎町の飲食業界にとって無視しがたいターゲットなんですよねえ。とくに女性。元気です。

 私にもそんなおばあちゃん女子会の知り合いがいます。でも、上記2点で『山ふところ』をオススメしにくい。うどんを小鉢にして、あっさり和膳とのコンビネーションがあったらいいですね。

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 熱いのも食べてみたくなりました。ふわっと鰹の香りが立ち上がり、どれだけていねいにダシを引いてあるか、よくわかります。宮津の『こんぴらうどん』と相似形のようなおいしさです。『こんぴらうどん』がやみつきの人なら、きっと『山ふところ』も気に入ってしまうはずです。


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 ここの大将はまだ若いです。34歳。庭でちょっと見かけたとき、少年のような純真さを発散させていました。

 学校では土木工学を学んでその領域の企業に就職しました。ところが、ある日、香川県への出張。そこで讃岐うどんに出会って、とりこになってしまった。うどんをやりたい。お母さんにうかがいますと、とにかく一途な男の子だそうです。

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 土木工学の経歴を活かして、古民家の内装は自らのセンスと大工仕事でやったと聞きました。既製品は家具くらい。庭のテーブルも自作しました。
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 私は大将のおじさんくらいの年齢です。いいアイデアを思いついたなあと感心します。
 実用一点張りになりがちなうどんを遊び心で食べるなんて、楽しいことです。
 うどんに1200円と思えばたしかに高いけれど、自分の時間を演出すると思えば低コストです。のどかな農村の風景、居心地のいい古民家。視覚と味覚を楽しんで、のんびりできて、ええやないですか。

 けれども、その反面、このおいしいうどんをもっと手軽に食べさせて欲しいとも思います。福知山市内にうどんの店をやってくれたらええのにと、それがまた残念です。
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小麦粉重量で1kgずつうどんを打つ。それを寝かせてその日の客を待つ。




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 うどんの後は『囲座夢』でコーヒータイム。


 ママ、すなわち大将のお母さんが美人です。レトロな柄の和服がよくお似合いです。写真をブログに載せさせて欲しいと頼んだら、「私がでしゃばると子供がいやがるんですよ」とおっしゃってました。


mie 誰かにどこかで似ていると思ってました。ママ自身が「樋口可奈子ですか」とおっしゃるので、「そうしとこか」になってしまいました。でも、帰り道でひらめきました。往年の女優、浜美枝です。007のボンドガールにも抜擢された美女です。

 若い方のために、浜美枝の写真を。


 メニューがどれも「おうどん」になってたでしょと、ママ。
うどんではなくて、おうどん。これが息子さんの心意気だそうです。
 おいしく食べてもらいたい気持ちがあるから、「うどん」と呼び捨てにはできない。
 そう語るママの表情にふたつの気持ちを見る気がしました。
 ひとことでいえば、たかがうどん、されどうどん。
 「たかが」のほうが正しいのか、「されど」のほうが正しいのか。
 ママの表情がそう言っている気がしたのです。

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 蔵の後方の土手に、こんな穴を見つけました。湧き水を汲むための穴です。以前はここの湧き水でコーヒーを淹れたそうです。水の出口を覆っている藻を取り除けばまた水が出てくるんだけど、とのことでした。
 水脈がどこかで息づいているのか、こんな小さな池が自然とできあがり、イモリやオタマジャクシが暮らしています。

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 「時の流れに身を任せ」とテレサ・テンは歌いました。福知山のランチタイムというには居心地よすぎる時間と空間。仕事の日に来たらあかんと思いましたねえ。
 若い大将のかたくなな思い入れが幅広く受け入れらて、このユニークなうどん処がどうか続いてもらいたい。本当にいい歌が流行らないのも、これまた世の慣わしだけに、そう願ってやみません。

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 夜はひと組限定でディナーのコースが用意されています。この夜も15人の団体客が入っているとのことでした。これから肌寒い季節になりますと、この座敷で炉辺焼きもやるそうです。

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