2011-10-18

いさみ寿し(東舞鶴) 値段表記はないけれど




 いわゆる時価の寿司屋さん。値段の表記はどこにある?
 壁を見回しても、メニューをめくっても、ネタから酒に至るまで、いっさい値段は分かりません。
 食べログを見ましたら、評判がわるいですねえ。値段の割にまずいという厳しい評価が並んでいます。






 この写真を撮りながら思いました。いちばん手前にあるネタは鮪に見えます。この鮪、これだけあるうちのどこを切ってもらってもおいしさは同じだろうか・・・?たぶん違うと思います。腹に近ければ脂がよくのっているでしょうし。


 で、仮に、今夜はだいじな接待。お客様と並んでこのカウンターに座ったとします。そして、鮪を注文します。
 接待ですから、お客様をもてなさなくてはなりません。おいしいところを切って出してもらいたい。まずそうなところは出して欲しくない。


DSC03511 店のほうが、このあたりの感覚はもっと機敏でしょう。接待とわかっていたら、よりおいしいほうを出そうとするはずです。お客様を喜ばせるために金を使うわけですから、値段が張ってもおいしいものを出すほうが、店にとっても客にとっても都合がいい。


 この需要と供給の関係が時価の正体だと、私は思います。客のニーズと店の事情に合わせて中味と値段が可変性。時価には時価のよさがあります。だいじな点は、時価に見合った何かがきちんと揃っているかですね。
 魚料理のおいしい店が舞鶴には多いだけに、差別化がなかなか難しい。それでいていさみ寿しは安くありません。食べログの評判を落とす一因です。
 もうひとつの要因は、食べログの客の挑戦的姿勢だとも思えます。時価ならうまくなければ承知せんぞみたいないじわるさを感じます。時価はオーダーメイドだという風に解釈して、自分の予算や要望を店にはっきり伝えたほうが得じゃないでしょうか。


 いさみ寿し、値段表記はありませんが、決して敷居の高い店だという気がしません。カウンターを見ていますと、子供を連れた家族をはじめ、様々な客が座っています。女子高生のアルバイトが元気よく働いています。彼女たちが庶民的な雰囲気を一手に引き受けています。気取った寿司屋ではないことがうかがい知れます。
 また、そういう一面もなければ、景気がどんどんわるくなるいっぽうの舞鶴ですから、商売が続いてこなかったでしょう。
 なにか記念すべき機会など、ちょっと奮発してみようかというケースは誰にもあると思います。そんなとき、予算を大将に告げて中味を委ねて、それで間違いなくおいしいものが食べられる店なのだと思います。
 「思います」としかいえないのは、いさみ寿しに個人で来たことがないからです。舞鶴ということもあり、来る機会はいつも接待ばかりです。自腹ではないから評価が甘くなるかもしれませんが、食べログの評判よりは数段おいしいと私は思っています。
 
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 今回、仕事でいさみ寿しに来るのはこれで最後かもなあと思っていました。社内ルールが厳しくなりすぎました。いさみ寿しではひとりあたり単価が高すぎるという状況です。この夜は、たまたまですが、金を払わなくてもいい立場でした。ブログに間に合ってよかった。寿司のネタよりブログのネタ。


 あるできごとを思い出しました。


DSC03507 舞鶴市在住のある中小企業の社長さんから、福知山市のあるお医者さんを接待したいとの連絡がありました。あの先生に面と向かって接待したいなんてわしの口からはまだよう言わん、ぜひあんたの人間関係で舞鶴に連れて来てくれ。そういう要請でした。


 これはいさみ寿ししかないと、私は色めき立ちました。先生はフグ料理をご所望です。ますますもっていさみ寿し向きの接待。社長から先生への初接待ですから、いさみ寿しなら恥をかくこともないでしょう。
DSC03523 けれども、その社長、「いさみ寿しはあかん。高すぎる。向かいの紫がええ。中味は同じや」というのです。
 「そやけど、いまの話、いさみに言うたらあかんで。つきあいもあることやしな」と社長から釘を刺されました。


 わしには1億円の預金があるといつも豪語している社長の割にはケチなことを言うなあと思いました。それと同時に、地元の人は、たとえ金があっても、中味をよく把握した上で店を使い分けてるんだなということも知るに至りました。


 この社長のノウハウとマインド、ぜひ学びたいものです。
 
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