2012-01-13

おばあちゃんを竜宮城へ② Cアミーユ

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 この建物は「Cアミーユ西大路八条」といいます。「サービス付き高齢者向け住宅」と呼ばれる賃貸物件です。ここを自宅がわりとして、介護保険の訪問介護サービスを受けながら暮らす。そういう老人向けマンションです。
 ここには、いま120人余りの高齢者が住んでいます。自宅よりもCアミーユのほうが有意義と考えた独居老人や老夫婦が、こちらに住み替えています。老人ホームの空きが出るまでの期間をここで凌いでおこうという老人もいます。
 私の住むマンションからこのCアミーユまで、徒歩でたったの5分です。家族の出入りは24時間自由です。入居者の外出・外泊にもなんら制約がありません。


 ここにおばあちゃん(私の母親)を連れて行きました。中味を見学してもらいたかったからです。「おじいちゃん(私の父親)がもうじき退院してくるやろ、そしたら夫婦でここに住むつもりはないか?」と勧めています。
 といいますのも、おじいちゃんの身体も頭もポンコツになりすぎました。おばあちゃんも頭がポンコツになってきました。なにせ夫婦そろって90歳です。二人が自宅で暮らし続けるのはもう困難だといわざるをえません。



キャプチャ
 それぞれの部屋は、いわばワンルーム・マンションです。高齢者向けですからバリアフリーになっていますが、部屋の構造全体は通常のワンルーム・マンションとさほど相違がありません。
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 ここにベッドや家具を入れますと、こんな感じになります。下の写真はモデルルームです。洋服ダンスは作り付けですので、新たに買う必要がありません。
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 トイレと洗面所は居住スペースのすぐ隣にあります。居住スペースとトイレが近い。足腰がままならぬ高齢者にとってはこれが大きなポイントです。トイレには手すりが完備されています。洗面台は車椅子で使える高さです。
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 これがお風呂です。いちばん転びやすい場所ですので、手すりのつけ方も念入りです。浴槽は高齢者がひとりでも入りやすいように工夫されています。おばあちゃんはそれが気に入ったようでした。アミーユのスタッフは、浴槽をひょいとまたぐおばあちゃんを見て、そんなに脚が上がるんですか!?と驚いていました。
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 ミニキッチンといわれる流し台とIHヒーター。車椅子に座ったまま使える高さになっています。
 朝、昼、晩ともに食堂でご飯を食べることが前提になっていますから、本格的な調理機能は備わっていません。料理の好きな人は煮物などをこしらえてご近所どうしで交換し合っているそうです。
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 これが食堂です。「広いなあ~」とおばあちゃんがしきりに感心していました。気の合った人どうしがテーブルを共にしています。毎食が女子会みたいなもんです。
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 献立が日替わりで用意されています。食費は1日3食で1365円。毎日3食を食堂で食べますと、1ヶ月で40000円くらいになります。
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 食堂には食事予定者の名札が用意されています。食べに来た人は自分の名札をカウンターに渡します。食事の時間帯が終わってもまだ残っている名札があれば、スタッフがその人の部屋を訪れます。食事に来なかったということは、ひょっとして部屋の中で倒れているかもしれないからです。




 各階のエレベーター前は入居者どうしの交流空間にもなっています。食事に出てきたついでに世間話といったスペースです。
 廊下にはずっと手すりが延びています。手すりをつかんで歩くおばあちゃんの速いこと、速いこと。手すりの効果に目を見張りました。速く歩けるばかりではなくて、右手に持った杖の先が地面から浮いていました。
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廊下。左側面に個室並ぶ

 さて、気になるコストです。ざっとひと月20万円。その内訳は、下の図で見ていただけます。
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 こうした高齢者向け賃貸住宅ですと、入居時に高い金を払わされるというイメージが出来上がっています。有料老人ホームの前受け金がまったく返ってこないなど、介護ビジネスのあくどさが社会問題化したからです。
 ところが、Cアミーユの場合は、敷金・礼金といった入居一時金を撤廃しています。背景には、2011年4月にスタートした「改正高齢者向け住まい法」があります。割愛して話しますと、「改正高齢者向け住まい法」は、Cアミーユのような「サービス付き高齢者向け住宅」に対して、以下のような制約を加えています。
・敷金、家賃、サービス対価以外の金銭を徴収しないこと
・前払金に関して入居者保護が図られていること(初期償却の制限、工事完了前の受領禁止、保全措置・返還ルールの明示の義務付け)

 Cアミーユは、法が認めている敷金までもなくしてしまいました。まるで模範生のように見えますが、実際は家賃に敷金分が上乗せされているのではないでしょうか。たったあれだけの部屋が家賃10万円以上ですからね。七条よりも南側、西大路よりも西側といえば、賃貸物件が安い地域です。この6割から7割の家賃で家族用マンションも借りることができます。

 この料金体系、払いすぎかなあと思います。いや、払いすぎですね。
 でも、まあ、たとえ払いすぎでも、これでなければ得られないものがあるということで、私には苦しまぎれの選択でもあるわけです。
 両親の内情、あるいは高齢化社会の問題点などを話し始めますと、めちゃ長くなります。私の愚痴めいた話題は別の稿に譲るとしまして、いまはただ、両親がCアミーユを気に入ってくれるようにと祈るばかりです。

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