2014-10-16

加寿屋四天王寺店 かすうどん---まるで昔から四天王寺名物だったような

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 いっぺん食べてみてください。おいしいらしいですよ。
 大阪市内を引き継いでくれたグルメ美女が、そう言っていました。
 あの言葉を聞いたのは、たしか四天王寺の交差点。
 行ってみました。


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 どないやねん?ただのすうどんやろ?

 写真を見たみなさんからそんな声が聞こえてきそうです。でも、よーく見てください。うどんの上に、にんにくの薄切りみたいなやつがなんか見えるでしょ。それが「かす」です。

 まず、まだまだ知られ方が狭い「かす」のことから話さなくてはなりません。昔に比べたら「かす」の知名度は大幅にアップしたとはいうものの、それでもまだ知らない人がたくさんいます。


キャプチャ あぶらかす:加寿屋の通販コーナーから転載


 かすうどんを食べながら店のメニュー書きを読んでいましたら、「かす」は「油かす」ともいうと書いてありました。この説明は牛を例にしていましたが、その昔は、食肉にならなかった背骨や内臓からさらに脂分を絞り出して、それを石鹸用の油脂に加工していたそうです。油分を絞り出したら残渣が残ります。その残渣を「油かす」とか「かす」と呼んだのだといいます。

 でも、かすうどんで使われる「かす」は、そんなカス中のカスみたいな残りカスではありません。おいしさを目的にわざわざこしらえた「かす」です。
 店のホームページには、「牛の腸を油でじっくりと時間をかけて揚げ、余分な油分が抜けて肉の旨味が凝縮された、美味でしかも栄養価も高い食材です。まわりはカリカリと香ばしく、中はぷるぷるとした独特の歯ざわりが特徴です」と紹介されています。
 そして、この紹介文はさらに、「この『油かす』を手間暇かけて開発した特製のダシを使ったうどんにトッピングしたものが当社オリジナルの『かすうどん』です」と続きます。

 余分な油分を油の熱で抜くというと、カリカリベーコンなんかも同じです。油が抜けると同時に香ばしさが生まれる。この組み合わせによってもたらされるおいしさは後引きです。したがって、飲食業界では早くから用いられていたそうです。

 たとえば、全日本B級グルメ決定戦でグランプリを獲得した富士宮焼きそばには必ず「かす」が使われます。「かす」が入ってなければ富士宮焼きそばを名乗ってはいけないという取り決めによって正統性が保たれています。ただし、あちらは牛の腸ではなくて豚の背脂です。

 用いられることがあっても主役にはされてこなかった「かす」ですが、これまでの脇役を前面に引っ張り出して、あっさり料理の代表格ともいえるうどんとタッグを組ませた。これがかすうどんなんだということになりそうです。

 そして、実はおいしい牛の内臓という事実は、ホルモンやモツ鍋でを通してすでに多くの人が体験済みです。丁寧に製造され丁寧に調理された「かす」は、モツのさっぱり感とスジ肉の旨みを併せ持っています。


加寿屋のホームページ(画像クリックでサイトにジャンプ)


 長くなりました。

 かすうどんには「かす」のスライスが入っています。薄いもんですから、うどんつゆの熱で透明~半透明になってしまいます。食べているときですら見つけにくいくらいです。写真のかすうどんがすうどんに見えるのもそのせいです。

 写真、撮ってもええやろか?
 どうぞ、どうぞ。おいしいという話を広めてくださいね。
 そんなん、いまさら俺が広めんでも、とっくに有名やんか。

 そんな会話を経て、箸をつけました。いただきます。

 いや、これはうまい。なるほど。

 関西のうどんにしてはしょっぱ目のつゆ。鰹だしが利いてます。あれ、不思議。「かす」を浮かせてあるのに油の膜はどこにもない。かすうどんかどうかを問う前に、うどんとして単においしい。

 かすうどんは既存の発想を破って生まれた創作うどんです。加寿屋が始めたのは1995年のことですし、この四天王時店は去年の1月に開店したばかりです。
 けれども、新発想の料理にありがちなチャラチャラした印象はどこにもなくて、むしろ風格とか貫禄を感じました。まるで、何十年も前から四天王寺の参詣者に愛されてきたかの如く、実によくこなれた味わいでした。

 「かす」は、鰹だしのおいしさを邪魔することもなく、どこかでおとなしくしてます。「見つけんといて~」と言ってますが、そいつをわざわざ見つけて、つまんで、口に入れて。そのときの嬉しさ。カウンターのステーキ屋さんに行きますと、肉の脂身を小さく切って上手にカリカリにしてくれます。ああいう感じの香ばしさとおいしさです。

 麺は独特ですねえ。丸亀製麺みたいにシコシコということもありませんし、あそこまでの太さもないんですが、うどんのアルデンテとでもいいますのか、外側が柔らかくて内側でコシがあります。

 麺を全部食べまして、気づかなかった「かす」がほのかに3枚、4枚と漂う丼の中。このときになってはじめて、ラーメンの表面に見えるような薄っすらとした油の膜が現れました。で、つゆの味に、その見た目通りに、肉の風味と脂身の力強さが加わってきました。

 つゆをすべて飲み干したら、丼の底には砕けた鰹節。最後の最後で再び鰹風味を味わいました。

 いや、おいしかった。ちょっと肌寒い日やけど温まった。
 店を出ますと、南に阿倍野ハルカスの60階。西に通天閣の100メートル。掌を開きますと、100円玉4つで400円。おにぎり2個がついてきてランチタイム(15時まで)は600円でした。

 しかし、さっき入ってきたあのコはよかった。めちゃタイトなスカート。お尻パッツンパッツン。パンティーのラインが浮き出てた。

 ごちそうさん。スジうどん、めちゃおいしかったわ~。

 店出るとき、スジうどん言うてしもた。なにがスジうどんや。パンティーのライン見て、間違えた。

 ということで、この後私は、聖徳太子が建立した四天王寺の境内を目指すことになります。

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