2015-01-20

小川珈琲堅田店(滋賀県大津市) 湖西に行きたくて

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 妻お龍の携帯はいまだにガラケー。
 という話ではなくて、大津市堅田の小川珈琲にやってきました。自宅の草津市からですと、琵琶湖大橋を渡り16km約30分。不思議なもので、同じ県内だというのに、湖の向こう側というだけで旅情たっぷりです。


20141228-IMG_5906マンション廊下から望む比良山系。よく晴れた朝、湖西の風景。


あちら側に行きたい

 晴れた朝、マンションの廊下からいつもこの景色が見えます。琵琶湖の向こう側ーーー滋賀県民は湖西と呼びますがーーーの壁とでもいうべき比良山系です。こんなに晴れた朝でも雲がかかるのは、琵琶湖から水が蒸発するからです。あっちに行ってみたい。いつもそう思います。比良山系の彼方に丹波を感じ北陸を感じているのかもしれません。

 写真の右端をよく見ていただければ低く円弧を描く琵琶湖大橋が写っています。あの橋を渡ったところが大津市堅田です。小川珈琲堅田店は、JR湖西線堅田駅から200~300mのところにあります。あっちに行ってみたいという心に任せてコーヒーを飲みに行くというアイデアがえらく魅力的に感じられました。

 湖の向こうに渡ってから、自分がどれだけ浮気者かをいまさらながら自覚しました。

 堅田の浮御堂をお龍に見せてやろうと、湖岸に立ちました。浮御堂は「錠あけて月さし入れよ浮御堂」という松尾芭蕉の句でもよく知られています。
 日没間近です。対岸のさらに遠く、夕日に照らされて神々しく輝く山が見える。あの山はいったいなに山か!?。
 目にした途端、あっちに行ってみたいと気が変わりました。
 いまそっちから来たばっかりやないか。

 あの遠景はどこの山か。地図で確かめました。三重県境にそびえる綿向山(1110m)で間違いありません。湖西に来たら来たでこんな景色が見える。ということは、琵琶湖の周囲は山だらけ。琵琶湖がへこんで周りは高い。滋賀県の地形はもんじゃ焼きか。神様はいったいどんなコテを使ったのでしょうか。


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IMG_7687写真上:夕日に照らされた綿向山。写真下:湖中に建つ浮御堂。


近くのコメダより遠くの小川


20150118-IMG_7733小川珈琲堅田店。2階建てで1階、2階共に客席。

 大きな小川珈琲です。建坪だけなら京都市花屋町通の本店を上回っているように見えます。道路を挟んで、小川珈琲クリエイツの菓子工場が、ほぼ南北方向に長く延びています。

 滋賀県内の小川珈琲直営店は4軒です。おもしろいことに、集客戦略とはいえないような立地条件をわざわざ選んでいます。守山店だけはショピング・モール内に店を構えていますが、残る3店舗、野洲店、彦根店、そしてこの堅田店は、「どうしてここに?」と思えてなりません。

 小川珈琲のホームページに会社沿革が掲載されていますが、それを読んでみて「どうしてここに?」の答を見つけた気がします。
 彦根店と野洲店の前身は滋賀県内に設けられた営業所でした。野洲には1972年、彦根には1986年に営業所が設けられました。おそらくですが、そもそも同じ場所で大きな直営店を開くつもりはなかったのでしょう。いっぽう堅田店です、ここが何年に誕生したのかは分かりません。しかし、自社品生産工場に隣接しているところを見ますと、やはりこれも集客重視の選択ではなかったように思えます。

 その立地が結果的には店の魅力に変身したと私は思います。たとえば野洲店ならば、大きなガラス越しに見える田園風景はインテリアの一部といってもいいほどです。彦根店ならば、ヒコニャン化した彦根城界隈から遠く離れ、あの町の本来の落ち着きを味わうことができます。この堅田店も、国道161号線から少し外れただけで実用本位の殺風景な光景と無縁になります。

 そういうところにクオリティーを感じるから、近くのコメダより遠くの小川。そんな感じでしょうかねえ。


20150118-IMG_7759ウッドテラスは客席ではなくて喫煙スペースになっている。喫煙席もあるが、お龍の希望で禁煙席に座りタバコのときだけここに来た。

20150118-IMG_7779真ん中の三段ステップを境にして、上段は喫煙席、下段は禁煙席。このスペースの他に、二階席があり、さらに一人客用のカウンター席がある。


ここは本当に落ち着けるとお龍が喜ぶ

 喫煙席ではパソコンを開く人やノート類を開く人の姿が目立ちました。いずれも一人でやってきて、勉強というのでもなく仕事というのでもなく、たとえば郷土史研究のような自主活動を記録にまとめているような風情でした。何かに熱中するときには、たしかに、煙草と珈琲が近くに欲しい。その人たちの満ち足りた気分が私にも伝わってきました。

 私達と同じ禁煙席には二人連れの客が目立ちました。
 「ここのお客さんはあんまり他人の悪口をしゃべってはらへんな」と言うと、「え、どういうこと?」とお龍が聞き返します。
 「いや、葛野大路と高倉通の交差点にあるやんか、小川珈琲。あそこ行ってみ。悪口ばっかりしゃべっとるで」と私。数ある小川珈琲のなかでも不思議なことに、あの店だけはいつ行っても悪口だらけ。耳ダンボになります。

 わざわざここまで来てみて、なによりもよかったのは妻お龍が気に入ってくれたことです。私一人でも来られるように帰り道はなるべく分かりやすいルートを選んでくれと言われたほどです。京都市の花屋町通にある本店が好きなお龍ですが、あそこよりも落ち着くと言っていました。

 私は、さっきからテーブルに来てくれる女性スタッフがかわいい美人さんでしかも愛想がいいので、それをいたく喜んでいました。静かさと淋しさが紙一重のこんな堅田だというのに、いったいどこからあの人を見つけてきたのでしょうか。これが小川珈琲の底力かと思いました。


 

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